STORY

奥出雲町の物語

心に響く音、あります

 町の約9割を森林と田畑で占める奥出雲は、それらの命を育む「水」に恵まれているところ。耳を澄ますと、町中からいろんな川の音が聴こえてきます。
 上流ではごうごうと、下流ではさらさらと、鉄穴流し跡の水路、「井手」ではちょろちょろと。 
 自然にとっても人にとっても水は命の源。町のあちらこちらから聴こえる水の音が心地よく感じるのは、この音が潜在意識の深いところに響くからなのでしょう。

名水の宝庫

 この地から湧きでる水は良質だと古くから知られており、733年に編纂された『出雲国風土記』にも、その不思議な力が記されています。
 ーーそれはオオクニヌシが国をつくっていたころ。オオクニヌシの子、アヂスキタカヒコノミコトは、あご髭が長くのびる年齢になっても、ものを言わず泣きわめくばかり。船に乗せ、たくさんの島を巡って慰めましたが、まったく効果がありません。困り果てたオオクニヌシが「子どもが泣くわけを教えてください」と祈ると、不思議なことに夢の中でアヂスキタカヒコノミコトが喋ったのです。目が覚めて、あらためて本人に尋ねてみると「みざわ」とだけ言葉を発しました。そしてオオクニヌシを案内して、川を渡り、坂を登ったところで立ち止まり「ここです」と言いました。その後、その沢から湧きでる水で身を清めたアヂスキタカヒコノミコトは、すっかり健康体になったそうです。
 この物語の場所として伝わるのが要害山の三沢池です。近くを流れる三沢川には、とうとうと水が流れる様をあらわした、その名も「トウトウの滝」があり、夏には蛍が飛びまわる幻想的な光景を見られます。このほかにも奥出雲には水の名所がたくさん。あっちの水もこっちの水も甘いはず。

町自慢の美肌の湯

 湧きでるものといえば、忘れてならぬ温泉の存在。
 奥出雲町には、斐乃上(ひのかみ)温泉、亀嵩(かめだけ)温泉、佐白(さじろ)温泉と3カ所あり、どこも美肌・美白効果が期待できるアルカリ性単純温泉です。
 斐乃上温泉は、スサノオノミコトが降り立った船通山の麓にある秘湯で「日本三大美肌の湯」としても知られます。「斐乃上荘」と「民宿たなべ」の2カ所の宿で入浴でき、とろりとした肌触りが特徴。つかったあとは驚くほどツルツルで、県外からもこの湯を目当てに人が訪れるほど。
 亀嵩温泉は古くから薬湯として親しまれており、棚田を一望できる、旅館「玉峰山荘」の中にあります。開放感たっぷりの露天風呂からは、『出雲国風土記』に登場する玉造りの神が宿る信仰の山として知られる玉峰山を望むことができ、歴史のロマンにもひたれます。
 佐白温泉は、ヤマタノオロチ神話の伝承地が点在するエリアにある日帰り温泉施設「長者の湯」の中にあります。ヌルヌルとした肌触りで、湯上りはサラサラ。岩風呂には斐伊川の石が使われており、この地のエネルギーを全身で感じられそう。
 いずれも湯あたりしにくく、子どもや高齢者でも安心して入浴できるやさしい湯。気兼ねなくゆっくりつかって、日々の疲れを癒してください。

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