たたらの精神が息づく鉄の里山をめぐる
島根県東部を流れる斐伊川の源流に向かって、ずんずん奥に。山間にしては不自然なほど、ぽっかり開けた棚田が見えたら、そこは出雲の奥地、奥出雲。かつてこの地に暮らした山の民は、この地を覆う良質な砂鉄と粘土、そして森の木々と川の水を使って、「たたら」と呼ばれる日本古来の製鉄技術を極めました。自然と人の知恵がまじり合うことで生まれる「たたら」の鉄。それはやがて錆びて朽ち、土にもどります。
過日より受け継がれた、この「たたら」の精神は、鉄という物質だけでなく、現在、目の前に広がる棚田や、後世を潤す文化や産業を育み、今を生きる私たちの「元気」にまで、深く関わっているのです。そもそも「元気」とは、活動のもととなる気力にあふれている状態や、天地の間の万物生成の根本となる精気を意味する言葉。この地に一歩降り立った瞬間から感じる気持ちよさ。これこそ「元気」に満ちている、鉄の里山ならではの天恵です。